若者の地元志向は追い風になるのか?地方企業に求められる採用戦略
先日、久しぶりに仕事の休みを取り、長野県の渋温泉を訪れ、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に登場する湯宿のモデルの一つとも言われている「金具屋」に泊まってきました。国の登録有形文化財にもなっている建物は、伝統的な数寄屋造りによる趣のある佇まいで、館内の随所に日本の伝統建築の美しさを感じることができました。また、自家源泉から湧き出る温泉も魅力の一つで、大浴場や露天風呂のほか、予約不要で利用できる貸切風呂も楽しめました。渋温泉では宿泊者向けの外湯巡りも楽しむことができ、浴衣と下駄で温泉街を歩きながら外湯を巡るのですが、温泉だけのための小さな建物が街のあちこちにあり、その独特な風景に驚かされました。日常を少し離れて温泉街の風情を楽しみ、良い気分転換になりました。

では、今日の話題です。
・地元(Uターン含む)就職を希望する学生は58.7%で、4年ぶりに増加。「Uターン顕在層(現時点で地元就職を希望)」の地元就職理由は、「両親や祖父母の近くで生活したい」が最多
・「Uターン潜在層(将来的に地元就職を希望)」は、高校生までに地元企業について知る機会があった割合が7割以上。地元外進学の学生の約5割が、高校生までの地元企業との接点が地元就職に影響すると回答
・地元就職を希望しない学生が、地元就職を検討する条件は「給料がよい就職先が多い」が最多。地元就職者を増やすアイデアには、小中高からのキャリア教育をあげる声も
マイナビ「2027年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」
マイナビが発表した「2027年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」では、地元就職(Uターン含む)を希望する学生が58.7%となり、4年ぶりに増加したことが明らかになりました。また、地元外に進学した学生の約半数が、高校生までの地元企業との接点が地元就職への意識に影響したと回答しており、若年層との早期接点の重要性が示されています。さらに、地元就職を希望しない学生が地元就職を検討する条件としては、「給料がよい就職先が多い」が最も多く挙げられています。
企業の労務管理の視点から見ると、この結果は地方企業にとって明るい材料と言えます。これまで若年層の都市部流出が続く中で、地方企業は慢性的な人材確保難に直面してきました。しかし今回の調査からは、「地元で働きたい」というニーズ自体は一定数存在しており、その受け皿をどのように整備するかが重要であることが分かります。
一方で、単純に「地元だから選ばれる」時代ではありません。調査でも給与水準への関心が高いことが示されており、地方企業は賃金面で都市部企業との比較を避けることができません。また、働き方改革の進展により、休日数や柔軟な勤務制度、キャリア形成の機会なども企業選択の重要な要素となっています。特に中小企業では、大企業と同水準の待遇を用意することが難しい場合もありますが、自社の強みや地域で働く魅力を具体的に伝える工夫が求められます。
また、今回の調査で注目すべきは、高校生までの地元企業との接点が地元就職意向に影響している点です。企業説明会や職場見学、インターンシップだけでなく、学校との連携や地域活動への参加などを通じて、若い世代に企業の存在を知ってもらう機会を増やすことは、将来的な採用活動にも大きな意味を持つと言えます。実際に、地元企業を知らないことが「志望企業がない」という認識につながっているケースも少なくありません。
北海道十勝においても、進学や就職を機に都市部へ転出する若者は多いものの、近年は地域での暮らしや家族とのつながりを重視する価値観も広がっています。十勝ならではの農業・食品製造業をはじめとした地域の強みを活かしながら、給与や労働条件の改善に加え、「どのような仕事を通じて地域に貢献できるのか」「どのようなキャリアを描けるのか」を発信していくことが重要です。地元就職希望者の増加という追い風を一過性のものにせず、地域企業が若年層との接点づくりと働きやすい職場環境の整備を進めることが、今後の人材確保の鍵になると思われます。
