【第25回】カスタマーハラスメントへの対応は万全?法改正と企業が押さえておきたい実務上のポイント

顧客や取引先などからの暴言、過度な要求、長時間の拘束といったカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会的な問題となっています。従業員が安心して働ける職場環境を確保するためには、顧客からの苦情や要望に適切に対応することと、社会通念上許容される範囲を超えた言動から従業員を守ることを区別して考える必要があります。令和8年(2026年)10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、事業主にカスハラ防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられています。

カスハラ対策でまず重要なのは、企業として従業員を守る方針を明確にすることです。顧客からの要求であれば何でも受け入れるという姿勢ではなく、正当な苦情には誠実に対応する一方、暴言や脅迫、過度な謝罪の要求、長時間にわたる拘束など、社会通念上許容される範囲を超えた行為には毅然と対応することを明確にしておく必要があります。こうした方針を経営者から従業員に周知し、現場の担当者だけに対応を任せない体制を整えることが大切です。

また、カスハラが発生した場合の対応手順をあらかじめ決めておくことも重要です。例えば、従業員が一人で対応を続けることを避け、上司や責任者に速やかに報告すること、必要に応じて複数人で対応すること、悪質な言動が続く場合には対応を打ち切ることなど、具体的な対応方針を定めておくことは対応する際の行動基準となります。暴力や脅迫など犯罪に該当するおそれのある行為については、警察への通報も含めて対応を検討する必要があります。

さらに、事案が発生した際には、会社として事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた従業員の心身の状態にも配慮しなければなりません。必要に応じて担当業務の変更や勤務上の配慮を行うとともに、対応記録や録音などを適切に保存し、同様の事案が繰り返されないよう再発防止策を講じることが求められます。相談したことを理由に従業員が不利益な扱いを受けることのないようにし、相談者や関係者のプライバシーを保護することも重要です。

実務上は、こうした対応を現場の判断だけに委ねないために、カスハラ対策マニュアルを作成しておくことが有効です。マニュアルには、カスハラに該当し得る行為の具体例、相談・報告先、現場での初期対応、管理職への引継ぎ方法、対応を終了する基準、警察等への連絡が必要となる場面などを盛り込むことが重要です。あわせて、相談窓口を設けて従業員に周知し、管理職や担当者への研修を行うことで、実際に事案が発生した際にも組織として対応しやすくなります。

カスハラ対策は、顧客の声に耳を傾けないということではなく、正当な苦情には適切に対応しながら、従業員の尊厳や安全を守るための取組です。法改正への対応として方針や相談体制を整備するだけでなく、発生時の具体的な対応手順やマニュアルを整え、従業員が安心して相談できる環境をつくることが重要です。自社の業務内容や顧客対応の実態に合わせて、実効性のある対策を進めていくことが求められます。