【第21回】パートタイマーへの賞与は必要?説明義務の強化と企業が注意すべきポイント

 同一労働同一賃金の考え方が浸透する中、「パートタイマーにも賞与を支給しなければならないのか」という相談を受ける機会が増えています。結論からいうと、法律上、パートタイマーに必ず賞与を支給しなければならないわけではありません。しかし、支給しない場合には、その取扱いに合理的な理由があることが求められます。

 同一労働同一賃金の制度では、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に不合理な待遇差を設けることが禁止されています。そのため、正社員には賞与を支給している一方で、パートタイマーには支給していない場合には、その差が職務内容や責任の程度、人材活用の仕組みなどの違いに照らして説明できることが重要となります。

 例えば、正社員については長期的な人材育成や将来的な役割・責任の拡大が予定されていることに加え、現時点においても職務内容や責任の程度がパートタイマーと異なる場合には、その違いに応じた待遇差が認められる可能性があります。一方で、単に「正社員だから支給する」「パートだから支給しない」という運用だけでは、不合理な待遇差と判断されるリスクがあります。

 実務上は、賞与を支給するかしないかで明確に区分するよりも、パートタイマーにも一定の賞与を支給したうえで、職務内容や責任、期待される役割等の違いに応じて支給額に差を設ける方が、同一労働同一賃金の観点から説明がしやすく、労務トラブルの予防につながるケースも少なくありません。

 また、制度そのものだけでなく、その理由を説明できる状態にしておくことも重要です。同一労働同一賃金に関する説明義務により、パートタイム・有期雇用労働者から待遇差の内容や理由について説明を求められた場合には、事業主は説明を行わなければなりません。日頃から賞与制度の目的や対象者の考え方を整理し、説明できるよう準備しておくことが重要です。

 さらに、令和8年10月1日施行の法改正により、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際の労働条件明示事項が追加されます。具体的には、「正社員との待遇の相違の内容や理由について、事業主に説明を求めることができる旨」を労働条件通知書等に明示することが新たに義務付けられます。今後は、従業員が制度内容や待遇差について説明を求める機会が増えることも予想されます。

 パートタイマーへの賞与の支給有無は、企業が自由に決定できる部分もありますが、同一労働同一賃金の観点からは、その待遇差に合理的な理由があり、かつ説明できることが重要です。法改正も踏まえ、自社の賞与制度や待遇差の考え方を改めて確認しておくことが、適正な労務管理につながるといえます。