【第23回】社内でハラスメント事案が発生した場合の会社対応のポイントと注意点
セクシュアルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・パタハラ)など、職場におけるハラスメントへの適切な対応は、企業にとって重要な労務管理の一つです。ハラスメントは、被害を受けた従業員の心身への影響だけでなく、職場環境の悪化や企業の安全配慮義務等に関する問題につながる可能性もあるため、事案が発生した際の初動が非常に重要となります。
従業員から相談や申告を受けた場合、まず重要なのは、会社が事実確認を適切に行うことです。相談者から事情を聞くだけで判断するのではなく、必要に応じて行為者とされる従業員や関係者からも事情を聴取し、メールや記録などの客観的な資料も確認しながら、できる限り中立的な立場で事実関係を整理することが求められます。また、相談者と行為者を同じ職場で勤務させることが適切かなど、調査中の職場環境についても配慮する必要があります。
特に注意したいのが、「もう少し様子を見よう」として対応を先送りすることです。ハラスメントの疑いがある段階で事実確認を行わず放置してしまうと、被害が拡大したり、職場環境がさらに悪化したりする可能性があります。相談を受けた時点で事実関係が明らかでなくても、まずは相談者の話を丁寧に聞き、必要な調査や被害拡大防止のための措置を検討するなど、適切に初動対応を行うことが重要です。
事実確認の結果、ハラスメントに該当すると判断した場合には、行為者に対する懲戒処分や配置転換などの対応だけでなく、被害を受けた従業員への配慮、職場環境の改善、再発防止策などについても検討する必要があります。一方、調査の結果ハラスメントに該当しないと判断した場合であっても、当事者間の関係や職場環境に問題が残っていないかを確認し、必要なフォローを行うことが望ましいといえます。
また、企業が対応すべきハラスメントは、社内の従業員間で発生するものだけではありません。令和8年10月1日からは、カスタマーハラスメント(カスハラ)に対する雇用管理上の措置が事業主に義務付けられます。顧客や取引先等からの著しい迷惑行為についても、相談体制の整備や被害を受けた従業員への配慮など、企業として適切に対応することが求められるようになります。
ハラスメント対策では、就業規則やハラスメント防止規程などのルールを整備することも重要ですが、規程を作るだけでは十分ではありません。相談を受けた際に誰が、どのような手順で事実確認を行い、どのような基準で対応を判断するのかをあらかじめ整理しておくことが、迅速かつ適切な対応につながります。ハラスメント事案は初動対応がその後のトラブルを大きく左右するため、「放置しない」「決めつけない」「事実確認を丁寧に行う」という基本を押さえておくことが重要です。
