【第17回】出張中の労働時間についての考え方と実務上の注意点
出張中の労働時間については、「出張=すべて労働時間になる」と誤解されがちですが、労働基準法上は実際に業務に従事しているか、また会社の指揮命令下に置かれているかどうかが判断の基準となります。そのため、出張中であっても、すべての時間が当然に労働時間として扱われるわけではありません。
具体的には、取引先との打合せや現地での業務、会社の指示により行う会議・作業などは、明らかに労働時間に該当します。一方、出張先への移動時間については、その時間が会社の指揮命令下にあるかどうかによって取扱いが分かれます。例えば、移動中に資料作成やメール対応を行うことが求められている場合や、移動手段・時刻が業務上厳格に指定されている場合には、指揮命令下にある時間として労働時間と判断されやすくなります。
これに対し、移動中に特段の業務指示がなく、自由に休息や私的行為ができる状態であれば、原則として労働時間には該当しないと考えられます。移動そのものが業務に付随しているという理由だけで、直ちに労働時間になるわけではない点には注意が必要です。
実務上重要なのは、会社として出張中の移動時間をどのように位置づけているかを明確にしておくことです。特に、移動中の業務対応が慣行化している場合には、本人の認識と会社の認識にズレが生じやすく、後に時間外労働の問題として表面化することもあります。
また、出張業務については、事業場外みなし労働時間制が適用されるケースもあります。これは、出張先での業務が事業場外で行われ、かつ労働時間の把握が困難である場合に、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。ただし、出張中であっても、具体的な業務内容や行動予定が詳細に指示され、実質的に労働時間を把握できる場合には、みなし労働時間制は適用されません。
出張に関する労働時間の取扱いについては、就業規則や社内ルールにおいて、移動時間の考え方や指揮命令下に該当するケースを整理しておくことが望ましいといえます。形式的な判断ではなく、実態に即した運用を行うことが、適正な労働時間管理につながります。
