転勤経験者の半数以上が「転勤で退職」を検討|企業が直面する現実と制度見直しの必要性

 先日、釧路の顧問先様でハラスメント研修をさせていただき、その帰り道に今年リニューアルされた恋問の道の駅に初めて寄ってきました。かなりの数の道の駅を今まで訪れましたが、新装後の恋問の道の駅は最近の道の駅の流行をすべて取り入れたかのような総合点の高い道の駅でした。買い物、食事(スパカツ、豚丼、海産物、パン屋、スイーツ)、キッズパーク、サウナ、RVパーク等の全てにおいて充実していましたが、やはり海沿いの立地ということもあり、景色が最高でした。

 では今日の話題です。

「転勤」に関する調査
転勤経験者の44%が、転勤を機に退職を検討。
今後、転勤の辞令が出た際も、半数以上が退職を視野に。

ー『エン転職』ユーザーアンケートー

結果 概要

★ 転勤経験者の44%が転勤をきっかけに退職を「考えたことがある」と回答。20代は4人に1人が実際に退職をしたことがあり、若い年代ほど転勤への抵抗感が大きい傾向に。

★ 今後、転勤の辞令が出た場合、全年代で半数以上が退職を検討するきっかけになると回答。

 転勤先のエリア、海外は中国、国内は東京都が最多。

★ 転勤を経験して良かったことは「知らない土地・環境を知る機会になった」、良くなかったことは「特にない」がそれぞれ最多。

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/42572.html

 エン株式会社の最新調査によりますと、転勤経験者の44%が転勤をきっかけに退職を考えたことがあり、今後転勤の辞令が出た場合も全年代で半数以上が「退職を検討するきっかけになる」と回答しています。特に20~30代ではその傾向が顕著であり、従来の「転勤は当たり前」という価値観が大きく変わってきていることが読み取れます。

 企業は人材配置の最適化や組織の活性化といった観点から転勤を位置づけてきましたが、もはやその考え方だけでは通用しない状況にあるとも言えます。特に北海道内においては、一拠点間の距離が本州の感覚と大きく異なり、札幌と十勝、あるいは道東・道北などの地域間移動は、実質的に遠隔地への転勤に匹敵する負担を伴い、抵抗がある従業員も多いと思われます。

 転勤は従業員本人や家族の生活基盤を揺るがし、転居費用や単身赴任などの経済的・精神的負担が発生します。さらに、若い世代ほど生活の場所や働く地域を重視する傾向が強く、転勤という辞令を「自分の人生をコントロールできない状態」と受け止め、会社への不信や早期離職につながりやすいと思われます。

 こうした現実を踏まえますと、企業側は転勤制度そのものを見直すことについても考えていく必要があります。特に、十勝エリアのように、食料基地としての農業や酪農、それに関連する食品加工業など、特定の産業が集積し、地域に根差した独自の経済圏が形成されている場所では、転勤が従業員の地域への愛着や生活基盤に与える影響はより一層大きくなる可能性があります。

 まず、転勤が本当に必要なのかを一つ一つ精査し、リモートワークや地域採用、拠点間の業務連携など、代替手段が存在する場合は転勤以外の選択肢を検討すべきといえます。そして、転勤を命じる際には、待遇や手当、引越し費用、帯同家族のサポートなどを明確にし、従業員の負担を軽減することが求められます。事前説明の不足や、異動後に待遇が想定と異なることは従業員の不信感を招き、退職リスクを高める要因ともなりえます。

 さらに、転勤の有無を選択できるキャリアパスを用意し、「転勤を受け入れられる人だけが昇進できる」という旧来型の運用を見直すことは、若い世代の定着に大きな効果があると考えられます。従業員が「辞令は一方的な命令ではなく、対話の中で決まるもの」と感じられる環境づくりが、信頼関係と長期的な定着につながっていきます。

 今回の調査は、転勤制度がもはや従業員の人生に深く関わる重要なテーマであることを改めて示したと言えるもので、企業が人材確保と定着を重視するのであれば、若い世代を中心とした従業員の価値観の変化を真摯に受け止め、転勤制度の透明化と柔軟な運用を進めることが不可欠であるといえます。