20人以下の小規模企業の74.3%が賃上げを実施|2025年度 賃上げ調査に見る中小企業の「本音」と課題
今月公開された「平場の月」という映画を見てきました。ラブストーリー系はほとんど見ないのですが、年代がドンピシャだったので、ちょっと興味が湧き、映画館へ。中学時代の甘酸っぱい思い出と大人のリアルな情景がシンクロし、結末の切なさも相まって、とても余韻の残るいい映画でした。ちなみに映画は少しピークの過ぎた頃にレイトショーで一番後ろの端っこの席で見るのが好きです。(厚労省ともタイアップしているようですね)

では今日の話題です。
「2025年度の中小企業の賃上げに関する調査」の集計結果について
調査結果のポイント
【ポイント①:2025年度の賃上げ実施状況】
今年度に「賃上げを実施済」・「賃上げを実施予定」と回答した企業は、全体で8割超、20人以下の小規模企業でも7割超。
「中小企業の賃金改定に関する調査」(2025年6月4日公表)と比較して、「賃上げを実施済」・「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は全体で12.4ポイント、20人以下の小規模企業では16.6ポイント上昇。
【全体】 賃上げを実施済 64.5%、実施予定 17.5%
【小規模企業】 賃上げを実施済 52.3%、実施予定 22.0%
2025年の賃上げ調査で、全国の中小企業が示した「賃上げ実施(または予定)」の割合は約7割と聞くと、まず「大企業だけではなく、中小企業も賃上げを進めている」という印象を受けます。実際、調査結果を見る限り、正社員の月給ベースでの平均賃上げ額は約13,183円、賃上げ率で4.73%という数字も提示され、小規模企業であっても賃上げされるケースは決して少なくありません。
しかしながら、この調査結果だけを見て「中小企業が大企業と同水準で賃上げを行った」とは言い難い点もあります。実態としては、大企業が提示する賃上げ率と比べると依然として格差があるという報道もあり、中小企業における、いわゆる防衛的賃上げ(業績回復が伴わない中での賃上げ)が過半を占める点も重く受け止めるべきと言えます。
十勝のような地方圏においても、零細・中小規模の事業所を経営または運営する企業にとっては、なお厳しい現実と言えます。人口減少、後継者不足、物流コストの増加、地域間の賃金水準格差といった都市部に比べ、複合的な構造的ハンデがある中で、人件費を上げることは、経営を圧迫しかねません。価格転嫁が難しく、受注条件や原材料費の高騰で利益率が圧迫されやすいことが大きな要因です。
それでも、中小企業が賃上げを選択肢として示すというのは、裏を返せば「従業員の確保・定着」を経営上の重要課題と認識していることの表れとも言えます。実際、賃上げを実施する理由として「人材の確保・定着」「物価高騰への対応」「最低賃金の上昇」などが挙げられており、賃金だけでなく雇用維持を含めたトータルな労務環境の重視が背景にあります。
ただ、若年層や転職の多い世代にとっては、少額の賃上げよりも「安定した待遇」「将来の成長性」「働きやすさ」「地域生活との両立」などの条件が優先されやすい傾向があります。地方ではなおさら、転職のハードルが高く、求人が限られるという事情もあるため、“賃金+地域に根ざした雇用の魅力づくり”が問われます。
そういった点から中小企業は、今回の調査を単に「賃上げ率がどうか」という数値の問題に終わらせず、 「賃金水準の底上げ+働きやすさや地域適応を含む総合的な処遇改善」 に視点を広げるべきと言えます。
特に、北海道・十勝といった地域では、都市部にはない「地域との結びつき」「暮らしの安心感」「地元ならではの働きやすさ」という無形の価値を労働条件に含めることで、単なる賃金競争にならず、人材確保と定着につなげることが可能です。
今回の調査の数字は、中小企業が「賃上げ」の努力をしていることを示す一つの指標ではありますが、大企業との差別化を図り、地域の特性や社員一人ひとりの生活を踏まえた待遇設計を行うといった「総合的な処遇整備」を目指す中小企業こそが、これからの時代に強みをもち、安定した雇用と持続的な成長を実現できるかと思います。
