賃上げしても離職は防げない?企業が向き合うべき本質的課題とは
先日、21世紀職業財団が実施している「ハラスメント防止コンサルタント」の資格試験を受けるため、東京へ行ってきました。結果は何とか合格。ひとまずホッとしています。ハラスメントの捉え方や求められる対応は、社会の価値観とともに変化していくものです。そのため、資格取得で終わりではなく、今後も知識や考え方をアップデートし続けていきたいと考えています。最近は、ハラスメント防止に関する社内研修のご依頼をいただく機会もかなり多くなってきました。より実務に即した、深みのある内容をお伝えできるよう、引き続き研鑽を重ねていきたいと思います。

では今日の話題です。
「賃上げと就業意識に関する定量調査」を発表 給与が“変わらない”は“下がる”と同等の離職リスクに
物価上昇や労働力不足を背景に賃上げの動きが広がる中でも、実質賃金は3年連続で減少しています。本調査では、49歳以下において、3年後の給与が「変わらない」と感じる層の継続就業意向は27.0%にとどまり、「下がる」と感じる層(31.5%)と同水準でした。賃上げが進む中で、将来に給与が「変わらない」と感じる層の“働き続ける意欲”は、実質的には「下がる」と同程度の離職リスクとなっていることが明らかになりました。
パーソル総合研究所「賃上げと就業意識に関する定量調査」
近年の物価上昇と人手不足を背景に、多くの企業で賃上げが進行しているものの、今回のパーソル総合研究所の調査は「給与が『変わらない』と感じる社員の就業意向は、給与が『下がる』と感じる層と同等の離職リスク水準にある」と示しています。給与自体の増加は約半数で見られるものの、その多くはボーナス等の一時的要素によるものであり、将来の昇給期待の喪失が従業員満足や定着に影を落としている点が注目されます。
企業側の視点からは、単にベースアップを行うだけでは離職抑止にならない可能性があることを自覚する必要があります。特に若手・中堅層では「将来の給与が変わらない」との認識が強く、転職を検討する割合が高まっています。調査でも、給与の透明性や将来展望の提示、勤務時間の柔軟性といった「納得性」や「時間とのバランス」の改善が、就業意欲を支える要素として指摘されています。
賃上げ額そのものよりも、報酬決定のプロセスが従業員に理解・納得されるかどうかが定着に直結するという視点は、会社の方針や制度設計に取り入れるべき重要な視点です。特に給与体系が横並び評価に偏ると、評価の透明性を欠きモチベーション低下を招くリスクもあります。
北海道十勝のような地方中小企業においては、都市部企業と比べて給与水準での競争力が相対的に弱いことが少なくありません。そのため、単純な賃金引き上げ戦略には限界があり、従業員のキャリアパスや仕事のやりがい、労働時間とのバランスを含めた総合的な報酬設計が不可欠です。特に十勝のように生活コストと郷土愛のバランスを考える働き手にとっては、単なる金額の増加よりも「この会社で将来的なキャリアを築ける」と感じられる制度の方が魅力となる場合も多いのかもしれません。
また、労働市場全体で賃金上昇が続く一方で、従業員がそれを「自社だけの強み」と捉えられなければ、離職リスクは高まります。ですから、地方企業は自社の強みや将来性を丁寧に伝えるコミュニケーションを含め、 “見せ方”と“納得性”を高める仕組みづくり が重要になります。
今回のこの調査からは、賃金と就業意識の関係を改めて示すと同時に、賃上げそのものよりも 従業員との対話と制度設計の質が定着に不可欠であることが浮き彫りになっています。 企業側はこの視点を経営戦略として捉え直すことも必要かと思います。
