副業・兼業「解禁」の効果は限定的?十勝の企業が導入前に考えるべきこと

 先日、社労士会のブロック研修会で北見へ行った際、帰りにあいおいの道の駅へ立ち寄りました。道東方面の紅葉はすでに終盤で、季節の移ろいを感じます。このあたりは道も走りやすく、北海道は今まさにドライブに最高の時期ですね。ただ、道端から鹿やクマが出てきそうで、少しだけ緊張しながらの運転でした‥。

 では、今日の話題です。

「副業・兼業」に関する企業の実態調査
約半数の企業が社員の副業・兼業を容認。前年調査より3ポイント上昇。
副業人材を受け入れる企業は24%。狙いは「人手不足解消」「専門人材の獲得」。
ー人事・採用担当者向け情報サイト『人事のミカタ』アンケートー

結果 概要
49%と、約半数の企業が社員の副業・兼業を認めていると回答。前年調査より3ポイント上昇。
副業・兼業を認めてよかったこと、困ったこといずれも“特にない”が最多。
副業・兼業禁止の理由は「本業に専念してもらいたいから」「社員の過重労働に繋がるから」。
24%が副業・兼業で働く人を受け入れていると回答。前年より6ポイント上昇。受け入れている理由は「人手不足解消」「専門人材の獲得」。

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/43555.html

 今回の調査で「約半数の企業が社員の副業・兼業を認めている」「副業・兼業で働く人を受け入れている企業は24%」との結果が出ています。企業側にとっては、「人手不足の解消」「専門人材の確保」といった明確なメリットがあることが改めて数字で提示された点は注目すべき点ですね。人口減少や若年層の都市流出が進む地域では、複業によって多様な人材リソースを確保するのは有効な選択肢であるとも言えます。

 一方で、「副業あり」の企業の多数が「特に良かったことはない」「困ったことも特にない」と回答しており、定着率改善やモチベーション向上などの労務改善効果は限定的だという結果も出ています。つまり、企業の考えだけで導入した「副業・兼業解禁」が労務改善や離職防止には直結しない可能性があると言えます。特に中小企業や地方の事業所では、労働時間管理や安全衛生管理、既存の就業規則との整合性確保など「副業対応コスト」が無視できません。

 今回の調査結果を十勝企業の視点から見ると、この調査結果を鵜呑みにせず、自社の実態を冷静に分析したうえで「副業・兼業許容」の可否を検討すべきだと考えます。例えば、農林水産業、建設業など、季節・繁閑の波がある業種が多い十勝では、繁忙期と閑散期の労働需要の変動が大きいため、副業・兼業によって“足りない時期だけ補う”という柔軟性は理にかなっていると思います。しかし、同時に「本業への影響」「労働管理の複雑化」「過重労働のリスク」など、従業員の健康管理や安全配慮義務の重みも増すといった課題もあります。

 地方では「専門人材」がそもそも都市部に流出しやすく、いったん離れた人材を副業という形で呼び戻す試みも考えられます。たとえば第一線を退いた経験豊富な人材や、子育てや介護などでフルタイムが難しい人材が「副業・兼業」で地域に貢献するといった柔軟な働き方の選択肢を設けることは、地域経済の維持・活性化につながる可能性があります。十勝管内では都市部の経験豊富な人材がこちらで起業、経営参画するというケースも増えているように感じます。

 しかしながら、「とりあえず副業解禁」という飛びつき型の導入をするのは慎重であるべきとも言えます。特に労使双方の状況の把握、就業規則の整備、副業中の事故や労災対応、税務・社会保険手続の明確化など、「人事・労務管理の実務負荷」が増えることを十分理解しなければなりません。

 今回の調査は「副業・兼業」が企業にとって一定の可能性を持つことを示す有力なデータではありますが、一方で特に地方・中小の事業所では、自社の事情(業種、従業員規模、繁閑の波、既存の労務管理体制など)を十分に踏まえたうえで、慎重かつ段階的に導入を検討すべきであるとも言えます。